沖縄のブライダル業界について
素敵なドレスとたくさん触れ合えたちゅら婚
ちゅら婚ラボでは、ブライダル情報誌『ちゅら婚』の出版だけでなく、ブライダルカウンターの運営の他、最近では結婚相談所事業も始め、出会い~結婚・結婚式と一連のサポーをしているそうです。
昨年の7月にサロンをオープンしたミキトニーさん。ご自身もブライダル業界に足を踏み入れたそうです。
「『ちゅら婚ラボ』自体そもそもご縁があったりしてお世話になっている」と言うと、その言葉を待っていたかのように「自ら話を振ってもらって!今手元にあるんですよね!?」とナガハマさんが喜々として答えます。
その言葉を聞き何かに気づくミキトニーさん。「なんで持ってきたの!?で~じ(とても)恥ずかしい!」と声を上げます。安里さんの手元にはミキトニーさんが表紙になった2015年のちゅら婚が握られていたのでした。予想外のアイテムに大いに盛り上がるスタジオ、8年前のミキトニーさんの初々しさに興奮気味のナガハマさんでした。
コロナ禍にも関わらずブライダル情報を発信し続ける「ちゅら婚」は貴重な存在で、幅広いサービスで新郎新婦とブライダル業界を橋渡しされているとお話するMCのお二人でした。
フリーランスのウエディングプランナーってどんなお仕事?
「会場に属していないフリーランスのウエディングプランナーで、新郎新婦のお二人と、会場探しから打ち合わせ・当日のエスコートまでトータルプロデュースをしています。」とお話する冨名腰さん。0ベースから全て作り上げているそう。
担当した式の中でも珍しいのが「無人島」での挙式だそう。ダイビングが好きで沖縄に何度も来ている県外出身の新郎新婦のお二人に冨名腰さんが提案し実現したとのこと。ある程度整備をされている無人島とは言え、ウエディングアーチやフラワーなど挙式をする機材一式は本島から運んで皆で手作りしたそうです。
沖縄にフリーのブライダルプランナーはどのくらいいる?
「沖縄にはフリーのプランナーシステムはあまり定着してないように感じますが…」と言うミキトニーさんに「沖縄には恐らく1桁ですかね。」と冨名腰さんが答えます。県内外どちらのカップルも手掛けるそうですが、一番多いのは沖縄と県外出身のカップルとのこと。文化の違いを紐解きながら、お二人らしさを演出できる式になるよう提案をしているとのことでした。
ウエディング業界の動向と現状
減少理由はコロナ禍だけではない
沖縄県が出している「沖縄リゾートウエディング実施組数(2022年)」のグラフから2017年までは右肩上がりでしたがその後徐々に減少している傾向にあると説明するナガハマさん。コロナの影響もあり一時大きく低下した婚礼件数は、現在では徐々に回復している状況とのことですがゲストの二人はどう感じているのでしょうか。
「地元(県内)の婚礼をメインにしているので、まだ回復はしていない」と答える安里さん。沖縄の結婚式は二分化しており、リゾート婚はほぼ県外の需要なので、増えて見えるそうですが、地元はまだまだと感じているそう。
「近年では晩婚化も相まって式を挙げる組数も減ってきていると思うが、結婚する総数からみた結婚式を挙げる割合はどうなっているんですか?」と質問するナガハマさん。
「沖縄の婚姻届出数が2019年で約8,000、2021年で7,020組と婚姻組数も減っていて、その中でも結婚式の実施率は約半分以下程度…」と安里さんが答えます。色々なホテル式場の方とお話する中で肌感覚的にそう感じているそうです。
式を挙げない理由としては、子どもが生まれたり、お金のことがあったりなど様々な状況で後回しになっているのではないかとお話しました。
時代で変化していく結婚のスタイル
「結婚式を挙げる組数が減っていくことは仕事量も減少すると思いますが、どういう課題を現場では感じていますか?」とナガハマさんが質問します。
「少子化が加速するとウエディングの市場規模自体もどんどん縮小されていく、入籍はしているけど式をあげない『ナシ婚』カップルがものすごく増えてきている。2017年でナシ婚率14.4%から2020年では28.9%まで上がっているデータも有るんです。」と冨名腰さんが答えます。
2019年には既に5%上がっているのでコロナの影響も関係なく、ナシ婚率は徐々に上がってきているそうです。しかし、結婚式を挙げたいと頭の片隅にあるカップルはやっぱりいるので、そういった方に向けてアプローチすることが大切だと感じているそうです。
結婚式のお手本が身近にいない
「結婚式に触れる場所が減ってきている」と感じている安里さん。20代前半の若いカップルの方が「何をどう(準備)したらいいかわからない」と相談に来ていたことがあったそうです。式に参列したり、身の回りに挙式した人がいなかったとのこと。これは課題だと感じているとのことでした。
ライバル会社も力を合わせ業界を盛り上げる
「競合他社のライバルを一つの会場に集めて結婚式の相談会を開催して皆で盛り上げるイベントを企画しました。」と安里さん。
コロナで打撃を受けた沖縄ハーバービューホテルをはじめ県内のホテル式場が一丸となって、業界を盛り上げたいという思いから昨年の夏に開催したそうです。
ライバルだった人たちもタッグを組んで業界を盛り上げたいという姿勢に感心するミキトニーさんでした。
出会いの場から支援!カップルを増やす取り組み
「コロナ禍で出会いすらなくなっていると聞いて、結婚式をする方も婚姻する方も減っているのであれば、出会いから支援していこうと、事業の運営をスタートいたしました。」とお話する安里さん。全国2,800社の結婚相談所が集まっている組合の会員となり、オンラインでマッチングする結婚相談所を始めたそうです。
「オンラインお見合い」の言葉に驚くMCのお二人。「どんな風にやるんですか!?興味あります!」と食い気味のミキトニーさんの様子に「????」が浮かぶスタジオ。一瞬の間の後にハッとしたミキトニーさん。「今さらマッチングとかしないですよ!どんな感じなのかなって…」と弁解するミキトニーさんの様子に笑いに包まれるスタジオでした。
どうやってマッチングさせるのかの質問に「アプリのようにお相手を検索していく」と答える安里さん。相手のプロフィールを見て、希望の相手がいたらオンラインやリアルで繋いでいくそうです。入会にあたっては独身診断書など各種証明書が必要で、真剣に出会いを求めている人しか入会できないとのこと。
これを聞き「それなら安心ですよね」とコメントするミキトニーさんでした。
新たに生まれたニーズとは
参列者も一緒になって皆で作る結婚式
「コロナ禍でも結婚式をやりたいというお二人に関しては、式に対する思いが熱い」とお話する冨名腰さん。かつては挙式といえば牧師先生に誓うキリスト式から『日頃から二人のことを見てくれているゲストの方達に、承認者となって貰いたい』という思いからか、列席しているゲストに誓う人前結婚式が今では増えているそうです。
フォトウエディング需要の高まり
「リゾート結婚式だけでなく地元の方もフォトウエディングが増えている」という冨名腰さんのお話を聞き、「フォトウエディングをやって欲しいというお話が結構あって急遽フォトウエディングプランを作った」と答えるミキトニーさん。ウエディング事業を立ち上げた当初はドレスのレンタルと(式の)プロデュースを行っていましたが、県内のフォトプランのニーズの高まりを感じていたそうです。
ここまではウエディング業界の課題についてディスカッションしましたが、どのような未来にしていくと良いのでしょうか?
今後のウエディング業界に必要なこと
異業種とのタイアップで新しい式のカタチ。
「色々な異業種とのタイアップやコラボレーションができると、新しいものが生み出されるのかなと感じます。」と安里さん。10年余り、県内の結婚式に携わる中で、沖縄の披露宴文化と同じくらい、新しい価値の想像も大切だとお話します。
「神山さんの結婚式はパークアベニューを通行止めにして私と宮島真一さんで司会をしたんですけれど、ぶっ飛んでいて!でも『こういう形もあるんだな』という形を見せつけられた」と当時を振り返るミキトニーさん。他にも新郎新婦がお豆腐屋さんの結婚式ではウエディングケーキが豆腐だったというエピソードをお話しました。
プランナーは総合演出家?地域と作る結婚式
「地域と手を組んで、もっと盛り上げていきたい」とお話する冨名腰さん。地域の特産物や場所を結婚式で使い、地域を絡めていけたら、より楽しいことができると考えているそう。「ホテル」「式場」の中だけじゃなく、その枠を飛び越えて様々な所とコラボしていきたいと考えているそうです。
「それこそ最近、冨名腰さんと一緒に中村家住宅で(結婚式を)やりましたよね」とミキトニーさん。国指定重要文化財の中村家住宅を活用したウエディングができないかと北中城観光協会からお話があり実現したとのこと。
様々な制約の中、新郎新婦のお二人が招待したい方を厳選し、実施したそう。沖縄の古民家で洋装の結婚式を行い、情緒を残しつつも、装飾などで今っぽさのある式だったそうです。
他にも、新郎新婦のお母さんが「ぶくぶく茶」を立て、お二人に振舞う「ぶくぶく茶の儀」を取り入れるなど、今までにない結婚式になったそう。このために冨名腰さんは、ぶくぶく茶の専門店に赴き、泡立て方のレクチャーを受けたそう。
これを聞いて、「プランナーの方は新郎新婦にとって、とても心強い存在。めちゃくちゃ信用できる総合演出家ですね!」とまとめるナガハマさんでした。
「結婚式」を身近に感じてもらうためにできること
幼い頃からウエデイングに触れる機会を
「きっかけが無いと、ウエディングについて触れる機会は少ないかもしれないと思ったら、ターゲットは若者ではなく、子供でもいいと思う」とお話する冨名腰さん。ブライダルの専門学校で講師もしている冨名腰さんが学生にウエディングプランナーを志したきっかけを尋ねたところ、幼い時に見た花嫁さんの姿に憧れたことだったそう。
「県外はあるんですよ。夏休みを使ってキッズプロジェクトみたいな形で。小学校低学年の子達と保護者、親子で一緒に結婚式を体験するという‥」とお話する安里さん。
これを聞き「沖縄でぜひやりましょう!私達3人ならできるんじゃないですか!」と乗り気のミキトニーさん。結婚式に幼いうちから触れたり「ウエディングの世界って素敵!」と思わせる場は必要だと力説します。
「(子どもに)手紙を読ませますか?」と茶化すナガハマさんでしたが、想像しただけですでに泣きそうなミキトニーさんでした。
みんないつかは「花嫁」に
「専門学校の学生が手作りしたドレスをショー形式でお披露目し、お子様にも体験してもらい、様々な企業のドレスショップに出展してもらう。ドレスの試着やフォト撮影、(親への)手紙の朗読などの体験コーナーがあってもすごく素敵だなって思います。」と冨名腰さんがお話します。
「一般の人はブライダル業界に、結婚式をする時だけ関わるといったイメージがある。でも、将来的にはお世話になるので、小さい時から関わり続けていくと、結婚式に具体的なイメージを持つことができるようになるのでは。」とまとめるミキトニーさんでした。
未来に向けた新しいウエディングのアイデアとは
様々な人達に向けた新しい結婚式
「その他に『こういうことをやっていけばもっといいのでは?』というアイデアはありますか?」と質問するナガハマさん。
「LGBTQの皆さんにも、結婚式や結婚のチョイスを‥平等にそういう機会を作っていきたい」とミキトニーさんがお話します。そのために、結婚式、ドレスや衣装の選択肢を作っていっているところだそう。「これが当たり前になって『LGBTQが‥』という枕詞をつけなくても成立していければいいですね」とナガハマさんが答えました。
ウエディングから広がる人のつながり、結婚式はゴールでなく人生のスタート
「結婚式は入り口で、そこから皆さんの人生に選択肢を増やしていきたいと思っている」と意気込みを語るミキトニーさん。
自身が幸せじゃないのに、人を幸せにできないから、まずは自身が幸せになる。その次に家族、次に周囲の友達や大事な人たちと幸せの連鎖を広げていくことが未来に繋がると考えているそうです。
これを聞き「ミキトニーさんの考え方は、とても素敵ですね。人口も結婚する方も減ってきてるけど、結婚する方たちにアニバーサリーなど新たな価値を提供していくことはとても大切だと思う」とお話する安里さん。
金婚式や銀婚式など節目の時に、家族の繋がりを感じて「結婚っていいな」と思ってもらえる流れを作りたいとのことでした。
インバウンドに向けて、沖縄のウエディング業界ができることは?
海外や国内のブライダル需要について
「インバウンドはこの先も右肩上がりだとは思います。国によって結婚式の価値観が全く違ってきたりするので、沖縄は世界に視野を広げ、様々な国の文化を吸収できると思います。」とお話する冨名腰さん。
基地の中で挙式・披露宴をした際に、ダンスホール中心の海外式だったそう。これを日本でやっても面白そうだと感じたとのことです。
沖縄=ウエディングのメッカというブランディングを
またコロナ前から、沖縄でリゾート婚を行う海外(アジア圏)の方たちは多かったそうですが、日本の方はハワイやグアムに行けるようになれば、そちらに行ってしまうのではと推察しました。
「それを止めないといけないんですよ!」と声を上げるミキトニーさん。日本には沖縄という素敵な場所があるのだから、沖縄で結婚式をやってほしいと切に願っているそう。もちろん、海外のプロモーションも視野に入れており、旅行会社と一緒に沖縄をブライダルの聖地として世界に認めてもらえるような土台作りを考えているそうです。
「県内の方には大規模な披露宴が楽しいということを改めて周知する必要があるし、県外・国外に向けては『沖縄はリゾート地だから(結婚式の)色々な願いが叶うかもしれない』と、様々な目線で沖縄に呼び寄せることが大事かもしれないですね。」と、まとめるナガハマさんでした。
以上のディスカッションを踏まえ、ウエディング業界の未来図は次のようになりました!
ウエディング業界の未来図
- 異業種とのコラボ等で結婚式に触れる機会を作り、結婚式のイメージを作ってもらう。
- 様々な人が安心して挙げられる新しい結婚式のスタイルを作る。
- 沖縄をウエディング業界の聖地として盛り上げていく
「さっきの子どもたちのアイデアは早速企画していきましょう!」と前のめりのミキトニーさんに「新事業発足!」と盛り上がるスタジオでした。
「みんなで作っていくものですから‥視聴者のみなさんも一緒に盛り上げていきましょう!人生の節目に結婚式あげるという選択肢もいいのではないでしょうか?みなさんの人生が素晴らしいものになりますように!」とまとめるミキトニーさんでした。
Guest Profile
沖縄の結婚式場・地域密着のブライダル情報誌「ちゅら婚」の創刊プロジェクトに参画。2015年にちゅら婚ラボを設立し、婚活支援やブライダル業界の人材育成にも尽力している。
沖縄県内のホテルでウエディングプランナーとして9年の経験を積み、結婚を機にフリーランスに転向。現在はブライダル講師やビジネスマナー講師などにも精力的に活動している。