緊急事態宣言から一年、沖縄の観光はどう変わった?
ハワイ超えから一転、観光客7割減
コロナ前の2019年には、ハワイ超えと呼ばれ、観光客数が1千万人以上も訪れていた沖縄ですが、非常事態宣言が出てからは250万人と激減。今でも海外観光客(インバウンド)は、ほぼゼロという現状だそうです。
大打撃を受けた沖縄の観光業界。現場では具体的にはどんな変化があったのでしょうか?有識者のお二人にお聞きしました。
「沖縄の翼」として苦渋の決断、社内バトルも。
「社内では相当バトりました」と語る川添さん。観光客の激減で大きな影響を受ける航空業界では会社の利益とユーザーの利便性という板挟みで何度も社内議論を重ねたそうです。結果として減便という苦渋の決断をされたそう。
「そういう側面って中々伝わってこない」と言うミキトニーさん、各現場でこういった議論がなされていた事に気が付きました。
相次ぐツアーの中止で収入が入らない!
「出発当日に緊急事態宣言が出ると、ツアーを中止せざるを得ないので、いくら頑張っても結果が出ない厳しい状態」と語るのは後藤さん。
これに対する直接的な行政支援はないものの県内需要を活性化させる支援はあったそうです。しかし、大人数のツアーはほとんど実施できていないそうです。
コロナ禍の暗い部分はわかりましたが、これを受けて対策など社内で変わったことはあるのでしょうか?
コロナが後押し?
新しいサービス開発
県産品はECサイトで物販開始
「様々な県内観光施設と協力して県産商品を買付け、ECサイトの運営を始めた」と後藤さん。観光客の減少で冷え込む県産品消費を支える狙いがありました。
また、旅行に行けないからこそ国内外・沖縄の物産を集めたイベントを開催するなど、いざ旅行に行けるときのモチベーションに繋げているそうです。
リモートワークの推進でワーケーションも夢じゃない
「リモートワークの普及で旅するように仕事をするワーケーションの環境も整ってきています。旅をしながら仕事をするというニーズは今後さらに増えそうです」と語るのは川添さん。
「今まで絶対できなかった!」というミキトニーさん。では、観光業界が解決するべき課題は何でしょうか?
コロナ禍で見えてきた沖縄観光の課題
国内需要とインバウンドのバランス
「インバウンドの回復は、各国の感染防止策が進んだ上で戻るので、以前のような動きはすぐに期待できない」と言う後藤さん。すでに海外向けバスツアーを国内向けに変更しているそう。
来沖1千万の内7割は国内観光客でしたがなぜインバウンドが注目されたかと言うと「爆買い」など消費額に大きく影響したことにあるそうです。
脱オーバーツーリズム、滞在日数と消費額アップで負担のない観光地を目指す
「観光客の増加で起こる渋滞問題などで、県民の観光への理解度が下がるのは残念な事。人数ではなく、滞在日数を伸ばしたり消費額を上げて、観光の質を上げていく事が課題」という川添さん。
ワーケーションなど、滞在日数を増やす可能性は大いにあり、現状に満足せず観光地としての魅力度を県全体で底上げしていくことが大事とのことでした。
では、未来の観光業界はどうなるのでしょうか?お二人に聞いてみました。
沖縄の観光業界の今後は?
一年中楽しめる沖縄、来沖数の平準化
「沖縄=海(ビーチ)=夏のイメージから、いつ来ても楽しめる沖縄を提供し、観光集中をならすことが大切」と語る川添さん。そのためには、秋冬にフェスをしたり、世界遺産など季節を気にせず楽しめる観光コンテンツが必要だそうです。
「私はウェディングを推したい!」とミキトニーさん。沖縄は秋冬もウェディングに向いているそう。国内外に発信して行きたいとのことでした。
観光客が望む観光ツアーの開発を。脱メジャー観光地!
「海だけではなく、高付加価値のあるツアーは何か?を考えた結果、バスツアーからちゅら海を外した」と話すのは後藤さん。代わりにやんばる三村を周るツアーや、渡嘉敷島でeバイクを楽しむツアーにしたそう。
ウチナーンチュと観光客が求める沖縄らしさのギャップは、よく考える必要がありそうです。
少しずつゴールが見えてきて、わくわくしてきたMCの二人。今後の観光業界に馳せる夢は何でしょうか?
「沖縄の立地を活かしトランスオーシャンの名前の通り、日本本土だけじゃなくアジアにも翼を広げ、もっと海外の観光客の方にも来てもらいたい」と語るのは川添さん、これには大賛成のMC二人。
一方後藤さんは「沖縄の観光をこんなものか、で終わってほしくない。ニーズに合わせて見るポイントや知識を伝える観光ツアーの強化で、観光付加価値をもっと高めて行きたい」とおしゃっていました。
以上のディスカッショから導かれた、沖縄の観光未来図3ヶ条は次のようになりました!
沖縄の観光未来図3ヶ条
- 行く側・迎える側の両方がルールを守って楽しい観光
- 異業種とのコラボ企画
- 中部に空港を!
沖縄の魅力は無くなっていないので、コロナが落ち着いたら、観光回復は十分にあるそうです。
その時に、観光客も地元の人達も気持ちよく過ごせるようなルールで、ぜひ沖縄を満喫してもらいたいと語るミキトニーさんでした。
Guest Profile
創業54年目の「沖縄県民の翼」日本トランスオーシャン航空株式会社(JTA)の路線事業部所属。運行のタイムテーブルや運賃などをつくっている。現在沖縄本島と離島を結ぶ14路線就航している。
今年で40周年を迎える株式会社ジャンボツアーズのインバウンド事業部所属。県内外のバスツアーや世界ツアーなどを手掛ける会社で添乗員として日本全国47都道府県を制覇、現在は訪日観光客の受入業務を担当。