沖縄の食生活が危ない?琉球薬膳で長寿県を取り戻す!

平均寿命が男女ともに全国一位だった沖縄。1995年には世界長寿県宣言を行いましたが、今では食生活の欧米化や運動不足などでその順位を落としています。
今回は、「薬膳でメンテ」の琉球薬膳料理研究家の宮國由紀江さん、中部徳洲会病院循環器内科医長の野村悠さんに、沖縄の健康長寿への現状や課題についてお聞きし、沖縄の未来図3ヶ条を一緒に作っていきたいと思います!

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健康長寿県から一転、全国平均寿命ランキング下落。

長寿県のイメージがあった沖縄。しかし今では、そうではなくなってきています。

全国的に平均寿命は上がっている

全国平均寿命の推移としては、1980年代に比べると、全体的な寿命は上がっています。もちろん沖縄県の平均寿命も上がっているそうです。

全国と沖縄の平均寿命推移の比較/厚生労働省
全国と沖縄の平均寿命推移の比較/厚生労働省

沖縄の全国平均寿命ランキングは下がっている

全国平均寿命ランキング見てみると「全然違う!」とミキトニーさん。今までずっと男女ともに1位だったのが、2015年のデータでは、沖縄男性の平均寿命ランキングは36位、女性は7位で78.44歳だそうです。

特に男性の急激な下落は、「26ショック」「330ショック」と言われ、2000年に4位だった男性の平均寿命は26位に、2010年には25位から30位、そこから2015年には36位まで落ちているそう。

この現状に驚く神山さん、沖縄男性代表として思うところがあるのでしょうか。

沖縄県の全国平均寿命ランキング推移/厚生労働省(2015年)
沖縄県の全国平均寿命ランキング推移/厚生労働省(2015年)

下落の原因は生活習慣?

「これってやっぱ原因は食生活なの?」と神山さん。

「男性より女性の方が長生き傾向です。全体的に食の欧米化で糖質過多、高度な加工食品を継続的に摂取していると、血管が詰まったりする原因になりますね。あとは一人一台の車生活で慢性的な運動不足とか。」と話す野村先生。

戦後からこの傾向はあったものの、食はすぐに結果が出ないので、徐々に溜まっていき、今になって表面化しているのでは…とのことでした。

今までと同じ改善のアプローチでは、長寿県沖縄に復活できないと話す宮國先生。それでは先生達の考える取り組みは何でしょうか?

患者さんの傾向から現状をお話する野村先生
患者さんの傾向から現状をお話する野村先生

ヘルスリテラシーの向上で病気になる前に予防する

予防が一番大事、対処療法よりも病気になりにくい体づくり

「疾患の水面下には食生活や運動不足、ストレスが潜んでいる。その部分をどうにかしないと病気リスクは消えない」という野村先生。日頃からの健康意識が大事だそうです。

若い人も興味を持つような「ヘルスリテラシー」の向上とは?

「県や市町村に介護長寿科はあるけど、県民の人たちに耳慣れになってしまってるのはマズイと思う。PRの方法を変えて若い人にも遊び感覚で取りいれてもらえるような方法を考えないと」と、語るのは宮國先生。

海外の類似した取り組みなどを参考に、コンテスト形式など楽しく気軽に参加できる健康イベントを開催する必要があるとのことでした。

喉元すぎれば…の意識は変えないといけないと思うMC二人。では具体的に何をしたらいいのでしょうか?

※ヘルスリテラシー…「健康や医療に関する正しい情報を入手し、理解して活用する能力」のこと

ヘルスリテラシーへの意識に興味が出てきた
ヘルスリテラシーへの意識に興味が出てきた

琉球料理が救世主?週1取り入れて食生活改善に

「これさえ食べればOKって食べ物ないの?」と笑いを誘う神山さん。
「難しい(笑)…けど朝、ご飯(白米)や炭水化物をきちんと食べることが大事」という宮國先生。こういった事から健康意識のきっかけになることが大切だそう。

「薬膳」って何?琉球料理との関わり

中国伝統医学の「医食同源」という考えがベースになっているのが薬膳。天然の食べ物は全部薬の効果があるという考えですが、古くから沖縄にも食べ物=薬という考え方がありました。根幹の考え方が同じ2つを組み合わせたのが「琉球薬膳」とのことです。

食生活を改善するなら、沖縄独自の食文化「琉球料理」を取り入れるべき

毎月第3木曜日の「琉球料理の日」は知っていますか?月一回は食べよう、という試みがあるそうです。

県産の野菜や食材の消費というよりは、琉球料理の調理方法が大事なんだそう。
庶民料理と宮廷料理がある琉球料理の調味料や食材も含めた理解の啓蒙が大事とのことでした。

最後の晩餐に食べるものは・・

「癌の患者さんに、最後の食事で何が食べたいですか?と、聞き取りをすると小さい時に食べたものを食べたがるんです。」と言う宮國先生。

今後はファーストフードなどが、増えてくるかもしれないとのことでした。食べたらホッとするものを作ることは、県民の健康を取り戻すのに繋がるのでは…とお話しいただきました。

琉球料理の可能性を語る宮國先生
琉球料理の可能性を語る宮國先生

琉球料理を使った食育の具体策とは?

レトルト開発で手軽に琉球料理を取り入れる!

「現代のライフスタイルを踏まえ、栄養価も高く価格も手頃なレトルトを県内企業と組んで作っては?」と神山さん。

料理法を覚えられるように半分調理のミールキットにして、楽しみ方レシピを付けたり、年代別のターゲットに合わせた内容にして、簡単に琉球料理を取り入れられるレトルトに…と、みんなアイデアが止まりません。

確かにそうすることで、子供のうちから琉球料理に触れる機会は増えそうです。

PRは食育映画でカンヌに行く!?

県内の有名タレントを総動員して、食育のPR動画を撮りたい!と息を巻く神山さん。エンドユーザーに届く面白い食育映画を作ってカンヌに行くそうです。

さて、以上をふまえた沖縄の健康長寿未来図3ヶ条は次のようになりました!

レトルト開発に盛り上がるスタジオ
レトルト開発に盛り上がるスタジオ

沖縄の健康長寿未来図3ヶ条

  • 琉球料理のレトルト&ミールキットの開発!
  • 健康コンテストの企画!
  • 琉球料理映画(食育映画)を作る、そしてカンヌへ行く!

琉球料理はナショナルジオグラフィックが取り上げるほど世界が注目するコンテンツだそう。

そんな素晴らしい文化がありながら不健康な沖縄になってしまったのは何故なのか、一人ひとりの意識改善が必要とのことでした。

気づいたときから始めても遅くはない。
孫たちの時代には、再び琉球料理を楽しく囲む時代が来たら、健康長寿県の回復も夢じゃないかもしれません。
そんな未来に向かって行動して行きたいと思います。

Guest Profile

琉球薬膳研究家 / 栄養士 / 国際中医薬膳師 / 沖縄県知事承認琉球料理伝承人 宮國 由紀江 みやぐに ゆきえ

琉球薬膳研究家 / 栄養士 / 国際中医薬膳師 / 沖縄県知事承認琉球料理伝承人 宮國 由紀江 みやぐに ゆきえ

約11年総合病院に栄養士として勤務その後宅配弁当治療食専門店を開業。薬膳料理を通して中国伝統医学を学ぶ。「食べ物はクスイムン」の原点となる、琉球の食医学書「御膳本草」に出会い、琉球の食文化に中国伝統医学が深く関わっていることを知る。 その後、薬膳教室を開業。薬膳初級講座(日本中医食養学会認定校)の講師を務め、現在は健康と美容をテーマに、沖縄に根ざした薬膳の考え方と御膳本草の研究と伝承に努めている。

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中部徳洲会病院 循環器内科医長 野村 悠 のむら ゆう

中部徳洲会病院 循環器内科医長 野村 悠 のむら ゆう

沖縄県北中城村にある中部徳洲会病院で循環器内科医長として勤務。循環器内科、不整脈を専門として担当している。内科認定医としての資格も持つ。

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