もっと、観てもらいたい!沖縄の映画ビジネスに必要なものとは?

沖縄では、今まで数多くの映画作品が作られてきました。しかし、映画をビジネスにするのは難しく、人知れずに終了していった作品がたくさんあります。今回は、「アンを探して」の監督 宮平貴子さんと、「琉神マブヤー」の演出や「沖縄を変えた男」を手掛けた高山創一さんに、沖縄の映画業界の現状や課題についてお聞きし、沖縄の未来図3ヶ条を一緒に作っていきたいと思います!

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魅力は何?映画業界に入ったきっかけは?

「映画は、監督・役者さん・スタッフが一緒になって、同じ目的に向かっているのがすごく身近に感じて…あ~これだ!と思ったのがきっかけ。」と宮平さん。

学生の時にお手伝いした映画祭で魅力にハマり、ご自身でも撮影をするまでに至ったそうです。

一方、「幼い頃に観たスピルバーグ作品がとても好きだった。20代の時は自主制作映画とかをやっていて制作会社に入ったのは30になってから。」と高山さん。

会社に入ってからは、CM現場やロケコーディネートのお手伝いをしていたそう。縁があって「琉神マブヤー」の演出を手がけ、39歳で独立、自主制作映画「沖縄を変えた男」を製作したそうです。

「監督とプロデューサーって役割に違いがあるんですか?」とミキトニーさん。お二人の考えを聞いてみました。

映画業界について盛り上がるスタジオ
映画業界について盛り上がるスタジオ

良作を作るには、監督とプロデューサーの相性が大事

「監督は作品演出~編集仕上げまで。プロデューサーは企画立案~配給会社の交渉・DVDを出すまで。」と答えるのは高山さん。プロデューサーには、制作・宣伝・資金調達・企画立案~実施まで、と様々な役割があるそう。

プロデューサーには権限が多い!しかし、責任もあり。

プロデューサーには、監督やキャストの人事権など権限が多いそう。もちろん、全部自身で決める訳ではなく、監督と相談しながら、制作を進める事がほとんどだそうです。しかし、最終的な責任はプロデューサーが負うのことでした。

良作を世に送り出すには、何よりも監督とプロデューサーの相性が大切で、互いの共有する感覚(何に感動を覚え、何を面白いと思うのか)が近いことが鍵となるそうです。

監督とプロデューサーの二人三脚で映画は作られていると知ったミキトニーさん。「他府県に比べ、沖縄の映画制作数は、多いのかな?」と、映画業界の現状が気になってきました。お二人からみた最近の動向についてお聞きしました。

監督とプロデューサーの関係性に納得のミキトニーさん
監督とプロデューサーの関係性に納得のミキトニーさん

沖縄映画業界の現状は?

沖縄発の映画作品は多い?少ない?

「僕はローカル(地方)では多いと思っている」と高山さん。しかし、監督やプロデューサーの数は多くないそうです。

それでは「沖縄で映画を作ろうとしたらビジネスチャンスはあるのか?」と、質問する神山さん。映画業界を取り巻くマーケット(市場)の現状はどうなっているのでしょうか。

コロナは映画業界の追い風になるのか?

「今は、コロナなので、正直難しい…」と厳しい表情の高山さん。
「(コロナ禍だし)ステイホームなど色々チャンスが有るのかと思った!」と意外そうなミキトニーさんに、高山さんは続けます。

「映画を作るには、色んなスポンサーからお金を集めないといけない。でも、今はスポンサー自体に余裕がなくて資金集めが厳しい。また、資金が調達できて作れたとしても、競合するネット配信が多く埋もれてしまう。」とのこと。映画館に集客してこそ利益が生まれるけど、現状では映画館自体の営業も難しく、映画業界を取り巻く環境は厳しい状況だそうです。

映画業界の現状を想い厳しい表情の高山さん
映画業界の現状を想い厳しい表情の高山さん

「やっぱり費用が課題?」とミキトニーさん。お二人はどう考えているのでしょうか?

沖縄映画業界の抱える課題は?

海外との共同制作でマーケット(市場)を広げる

「自身の監督作品『カラカラ』や『カタブイー沖縄に生きるー』はスイスとの共同制作でした」と宮平さん。共同制作にすることで2つの国からお金を集めたり、マーケットを広げられるメリットがあるそうです。

「本当は自分たちだけで、制作したほうが、良かったりしますか?」と聞くミキトニーさんに、「沖縄は観光予算が一番大きく、助成金を使うとなると、作品の内容に偏りが出たりします。」と答える宮平さんに、高山さんが続けます。

助成金だと表現の範囲が狭まる?

助成金で製作した場合、行政側は沖縄の文化を海外に紹介でき、沖縄へ来てもらいたいと言う意図があるそう。そのため、航空便がない国や情勢が不安定な国を題材にしたりするのは難しいとのこと。また、映画内容も暴力やエロスなど表現に規制が出てくるそうです。

「映画の中に社会性などが入っていると、他国の映画でも共感できる」と高山さん。しかし、そういった映画を撮るには、観光資源を打ち出したい行政側の思惑から外れてしまうため、企画自体が通らないこともあるそうです。

海外との共同制作について語る宮平さん
海外との共同制作について語る宮平さん

もし、資金が整っているなら、次にくる映画作りの課題は何?

「情熱を持つこと」と高山さん。最近のインディーズ映画を例にお話しいただきました。
低予算ではあるが、作り手の情熱を最初から最後まで感じ、何より面白い作品だそうです。「今の時代はお金集めも大変。好きじゃないと現場はきついです。」とのことでした。

「資金集め(制作費)」「映画を観てもらうにはどうするのか」「映画制作に対する情熱の持ち方と維持の仕方」の3点が課題だと感じたミキトニーさん。

それでは、今後ビジネスとして成立させるには、どうしたらいいのでしょうか?
理想の映画業界の姿とは何でしょうか。お二人にお聞きしました。

映画業界の課題について語る有識者のお二人
映画業界の課題について語る有識者のお二人

理想の映画業界をつくるために、できることは?

映画模合で資金問題は解決!?

「凄くいいアイデアが浮かんだ!」と宮平さん。沖縄映画ファンの方から年会費をいただき、監督と宣伝担当(プロデューサー)が順番に、その集めたお金を使い映画を作るという「映画模合」だそう。

あまりの勢いに、笑いの渦に包まれるスタジオ。「互いに協力しあって制作するスタンスは、模合にあってるかもしれない」とまとめる高山さんでした。

バリアフリー映画で、同時に笑う喜びを。

「沖縄映画に特化した上映会「映画のミカタ」で、音声ガイド・日本語字幕付きを導入しました。」と高山さん。

視覚障害や聴覚障害の方も、健常者の方と同じ映画劇場で一緒に楽しめるように、音声ガイドや補足を入れた字幕を付けたそうです。実際やってみたら、みんなが同じシーンで笑ってくれたことが、とても楽しかったそう。

「今まで映画を見ることを諦めていた人たちが、映画に触れるきっかけなっているなぁ」と感じたミキトニーさん。新しいアプローチの仕方に感心しました。

映画模合模合について楽しそうに語る宮平さん
映画模合模合について楽しそうに語る宮平さん

沖縄映画を多くの人に観てもらうには?

経営者なら誰でもプロデユーサーに?!

「これだけ制作費がかかったから、どれだけ回収をしないといけない…とかが、ある程度できれば誰でもできます。」と言う高山さん。そういった人材が増えていってほしいとのこと。

また、「基本に立ち戻ること」も大切だそうです。運良く予算があり、作品を世に出せたとしても、必ずしも観てもらえるわけではありません。自分が本当に作りたい映画なのか、情熱や時間をかけるに値するものなのか…と初期衝動を常に持ち続けることも必要とのことでした。

少人数スタートでOK!映画祭は育成の場。

「まずは、この場にいる4人で映画祭を始めても良いんです」と高山さん。映画祭には「観に来てもらい作品を育てること」以外に「監督やプロデューサーを育てること」が本来の目的の一つだそう。

「観に来た人たちにが映画を応援してもらう文化を作る、といった環境を(映画を作った)僕らが作るべきなんです。」と語る高山さん。環境が整うことで、映画業界が活性化し、スター性のある作品が生まれるかもしれません。だからこそ、環境整備が必要なのだそうです。

映画祭について語る高山さん
映画祭について語る高山さん

では、監督も観客も一緒に育つ映画祭とは何でしょうか?海外の事例を挙げお話しいただきました。

焚き火を囲んで青空上映会?上映後にみんなで語り合える場を。

アキ・カウリスマキというフィンランドの監督は、自身で映画館を持つほどの映画好き。映画祭のときは、特に賞などは設けずに、上映後に近くの川に集まり、監督やキャスト・観客などの立場関係なく映画について語り合うそうです。

無理に体裁を整えず、自然の中で素朴に行うことで、基本に立ち返ることができるそう。また、色々な人同士でコミュニケーションを取ることでき、情熱が湧いてきたり、そこにいる人達と新たなタッグを組んだり…と、人同士の繋がりが「映画を育てる文化」を作る理想の環境とのことでした。

「青空上映会や、その後に焚き火を囲んで語り合うのもいいいかもしれない」と盛り上がるスタジオでした。

ディスカッションの様子
ディスカッションの様子

課題と解決策は情熱の数だけある!

続編を希望!1度じゃ終わらない

低予算の映画をたくさん作るなど、様々な意見がでましたが、「まとまりませんでした・・・涙」とミキトニーさん。
情熱溢れるメンバーで議論を深めれば深めるほど、新たな課題が続出。「これは1回では終わらないね」と神山さん。

今回は未来図3ヶ条を作らず、次の機会につなげたいと思います。

Guest Profile

映画プロデューサー 高山 創一 たかやま そういち

映画プロデューサー 高山 創一 たかやま そういち

2009年「琉神マブヤー1」の演出(全13話中7話分)と制作を担当。その後、社内起業しエイカーフィルムを立ち上げ「ハルサーエイカー」TV シリーズ、劇場版のプロデューサー 兼原案を担当。2015年に高山製作所として独立し、映画「沖縄を変えた男」を自主制作映画として制作。現在は、視覚障害者のための映画音声ガイド制作、聴覚障害者のための 字幕付けなどの事業を行っている。 2021年12月には県立美術館博物館にて、「沖縄を変えた男」「ココロ、オドル」、「洗骨」3作品に音声ガイドと字幕をつけて上映会を実施した。

映画監督 / 映画プロデューサー 宮平 貴子 みやひら たかこ

映画監督 / 映画プロデューサー 宮平 貴子 みやひら たかこ

2008年「アンを探して」で長編監督デビュー。2009年にシンガポールのアジアン・フェスティバル・オブ・ファースト・フィルムズで邦人初の最優秀映画賞と最優秀監督賞を受賞。2011年に拠点を沖縄へ移し、初プロデュースした「カラカラ」は、第36回モントリオール世界映画祭で世界に開ける視点賞・観客賞を受賞。その後も、映画「カタブイ-沖縄に生きる-」をプロデュースしている。

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