オリオンビールのスタッフから見た沖縄ビール業界の現状と課題

今回は、沖縄のビール業界の現状と課題を商品開発の観点を踏まえ、オリオンビール株式会社の執行役員 R&D部長 栄養学博士・石井 芳典さんと、R&D部付(消費者調査担当)南 佑加子さんにお聞きし、沖縄の未来図を作っていきたいと思います!

Date:

Contents

毎日飲酒!人の五感が品質を守る。

毎日の官能検査で品質担保

「商品開発ってことは、飲むんですか?」と疑問を持つミキトニーさん。
「毎日飲む時間があります」と南さんが答えます。
「『官能検査』というのがあって、機械だけではなく、人の舌の力でもちゃんと味をチェックしてから発売をする」と南さん。
グラスによって味が変わるので、一定の品質で決められたプラスチックカップで試飲を行っているとのこと。味覚は機械よりも人間の方が遥かに上なんだそうです。そのため、最終的には人間がチェックすることが大切なのだそう。

また、競合商品の基本的に全てブラインドテイスティングを行い、オリオンビールの(商品の)立ち位置などを確認しているそうです。これには日々の努力に感心するミキトニーさんでした。

ところで、コロナ禍などもあり沖縄のビール業界の現状はどう変わっているのでしょうか?お二人にお聞きしました。

毎日のテイスティングについて語るお二人
毎日のテイスティングについて語るお二人

沖縄ビール業界の現状について

変化する「飲み」の型式

「観光客が激減することで、居酒屋での消費が全くなくなった。」と石井さん。しかし、それに反し、家飲みの需要が高まり、家飲みでの消費量が少しづつ上がったという現状だそう。それでも、全体の売上出荷率は減っているとのことでした。

「コロナ禍を抜きにしても若者の減少や、アルコール離れなど(の影響)も感じますか?」と質問するミキトニーさんに、お二人が答えます。

ノンアルコールでも一緒に楽しめる飲み会がスタンダードに

「若い人がビールを飲まなくなっているというデータは確かにある」と石井さん。(ビールの)苦味が飲みづらいとか、健康を気にしてハイボールで乾杯など、県外では顕著にでているそうです。しかし、沖縄は常に暑いのでビールの消費はまだいけるのでは…と感じているそう。

「最近は最初からノンアルコールだったり、ビールを強要しない風潮」と南さん。これには「飲み会で飲まないの!?」と驚きを隠せない神山さんでした。

飲まない飲み会に驚き思わずのけぞる神山さん
飲まない飲み会に驚き思わずのけぞる神山さん

オリオンビールの戦略と新商品の開発

親会社の変更と企業戦略

「親会社が変わったけど、雰囲気が変わったとかありますか?」と質問するミキトニーさん。

「基本的には全然変えているつもりはない」と石井さん。ただ、色々な製品開発に力を入れており、WATTA(ワッタ)などの新商品をどんどん出しているそうです。

自社だけが得するのではなく、ビール業界・泡盛業界と一緒になって業界全体を盛り上げていくと同時に、適正飲酒の啓蒙活動に力を入れているとのこと。

そんなオリオンビールの戦略どこにあるのでしょうか?

尖った商品で、ニッチをまず狙う

「すでにある多くのものと、同じものを作っても意味がない。」と石井さん。そのためには、消費者を知らないと勝てないので、今まで培った蓄積だけではなく、バイヤー達と意見のキャッチボールをしながら商品開発する事が重要と感じているそうです。

「確かに、お祭り会場など『ここではビールが合う」』といったシーンでは飲みたくなるよんね!」と盛り上がるMCのお二人に、石井さんが続けます。

戦略について語る石井さん
戦略について語る石井さん

消費者の意見を汲み取った商品開発

「ちなみに・・そんな商品を作りました!」と突如ビール瓶を手に取る石井さん。消費者の声から、コクが有るのに苦くないビールを作ったとのこと。オリジナル酵母を使用し、日本酒のような芳醇な香りが楽しめる商品なんだそう。

これには、「『こんなビールは初めて!』という感じで、ゴクゴク飲める」と南さんが感想を語ります。

定番ビール特有の青っぽいホップの香りではなく、発酵由来のフルーティーな香りがプレミアム感を感じさせるとのこと。

缶もサーバー提供もあり、居酒屋でも楽しめると聞き、「いいですね!」と盛り上がる飲み会大好きなMCのお二人でした。

苦労が詰まった商品だからこそ思い入れもひとしお

この商品開発は南さんが市場調査を行い、石井さんがビール開発をおこなったそうです。

「規模の大きな調査の一例として、味覚調査を行いました。消費者を100名ぐらい会場に集め、試飲後アンケートに答えてもらうことを県内外で実施したり、社内でも調査したり、何度も改良を重ねに重ねた商品」とその時の苦労を語る南さん。

味やラベルも、多くの提案の中から絞って、それをまた広げて…という作業を何度も繰り返すのだそうです。

「途中でもうわからん!ってなりませんか?自分がブレるというか…」と聞くミキトニーさんに「そう言うときに、消費者の方に聞いた調査データを判断材料にする。」と南さんが答えました。

これに「オリオン南の奮闘記を作ろう!これでファンがつくと思う!」と閃く神山さん。「見たいし、知りたい!」と共感するミキトニーさんと盛り上がるスタジオでした。

市場調査の苦労について語る南さん
市場調査の苦労について語る南さん

消費者の意見を取り入れるなど、一人でも多くの人に愛される商品を作りたい思いが、お二人からひしひしと伝わってきます。魅力的な商品の企画はどのように上がってくるのでしょうか?

沖縄の特性を生かした事業展開

「沖縄県産の麦を使用すれば、地元の人も喜んで飲んでくれてWin-Winなんです。」と石井さん。伊江島産の大麦を使用しているオリオンザ・ドラフトは、当初アイデアベースだったものの、今では多くの沖縄の方に支持されるようになったとのこと。

オリオンビールの積極的に県内企業とコラボしたり、県産品を使用して沖縄を盛り上げようとする姿勢に感心するミキトニーさんでした。

沖縄のビール業界が抱える課題は?

「この味」を多くの人に飲んでもらいたい!

「イベントなども積極的に仕掛けるんですけど、やはり回数が少ない、おそらく、家で飲めるようなビールがこれからうける」と石井さん。

そのために、消費者テストから得た市場の声を反映し、「コクがあって苦くないビール」をオリオンビールが初めて開発したそうです。本土では「苦くないとビールじゃない」といった基本的な考えがあるそうですが、沖縄だから、オリオンビールだから…ではなく「この味」を多くの人に飲んでもらいたいとのことでした。

沖縄という土地柄のコスト

「でも海外に持っていくにはコストがかかりますよね?」とミキトニーさん。

「やはり、沖縄で作ったものを県外に持っていくとなると輸送費がかかるので価格が上がってしまう」という石井さん。今後は、これを解決することが必要になるとのことでした。

ビール業界の課題について語るミキトニーさん
ビール業界の課題について語るミキトニーさん

ビール業界の現状と課題についてお聞きし、今後の価格値上げなどビール業界の動向に興味が尽きない様子のミキトニーさん。改めて、ビール業界の未来について話を進めます。

沖縄県産にこだわった新商品「プレミアム」の誕生

新商品「プレミアム」は未来を担う大型商品

「今後プレミアムという商品を出すことで、色々な選択肢を与える」と石井さん。
プレミアムは「大型商品」として、とても重要な製品と考えているようです。
プレミアムは沖縄県産にこだわった商品で、沖縄県産の酵母を使用しているとのこと。

「今回の製品は、沖縄県を歩き回り、3,000検体を集めて、その全てをチェック。その中から選ばれた10酵母から、さらに絞り込んだ酵母をプレミアムで使っています」と石井さん。
ちなみに、「プレミアム」の酵母は、シロツメクサから採取した天然酵母だそうです。

「酵母は色々な所にあるんです。桜の木とか草にくっついていたり、そういったことを3年前からひとつひとつやっていったんです」と石井さん。

石井さんの商品開発話を聞いて、ミキトニーさんも思わず「そりゃ飲んで欲しいわ!」と声を上げます。

「プレミアム」の開発についてお話する石井さん
「プレミアム」の開発についてお話する石井さん

次に狙うのはホップの収穫?

「今回は県産の酵母をという点に着目していますが、その他にこういうものを開発していこうみたいなことは?」とミキトニーさん。

これには「まだまだネタがあります」と石井さんが答えます。
「これから狙っているのは沖縄県産のホップ。ホップは北のエリアでしか採れないと言われていたが、琉球大学と一緒になって(沖縄で)ホップを収穫することに成功しました」と石井さん。

収穫したホップを使ってクラフトビールを作っていき、クラフトビール業界を一緒に盛り上げていきたいとお話します。

「オリオンビールの社員でも生のホップを見る機会は少ない」と南さん。
北のホップが育つ地域に出張にいかないと、見ることができないそうです。

新たな業界とタッグを組んでイノベーションを!

待ち望まれるイベントの復活!

「あとはエンタメの方も色々イベントを復活してもらえればと思ってます」と神山さん。
「これは皆さん待ち望んでいることだと思います」とミキトニーさんも共感します。
「やはり(イベントを)復活してくれと色々な意見を聞きます」と石井さん。
お祭りは楽しい場、出会いの場にもなり、復活が待ち望まれていることを改めて感じたMCのお二人でした。

「今まで組んでこなかったような業界とタッグで」とミキトニーさん。
これに「映画の上映とビールのコラボをやるということで」と神山さん。
オール沖縄のメンバーでやりたいとお話します。

「映画を絡めたイベントはありそうだと思う」とミキトニーさん。
映画を観ながらビールを飲むというシチュエーションが想像できると感じたようです。

全国美味いもの×オリオンビール、シーンとのペアリング

南さんが京都出身という事で、「京都の食べ物×オリオンビール」という組み合わせを思いついた神山さん。
ミキトニーさんも「それを全国各地でやっても」とアイデアを膨らませます。

「沖縄料理に合うものじゃなくて良い。全国の美味いものとオリオンビールのペアリングをイベント化してみても」とミキトニーさん。
これには「ナイスアイデアですね」と南さん。
ゲストのお二人にも好感触です。

「食べ物とのペアリングだけではなくて、シーンとのペアリングも考えている」と南さん。
「若者は酔っ払ってワイワイ騒ぎたいというよりも、その雰囲気を楽しんだり、チルするための情緒的アイテムに使ったりと、ニーズが多様化している中で、シーンに適したビールの組み合わせも考える必要がある」とお話します。

シーン×オリオンビールについてお話する南さん
シーン×オリオンビールについてお話する南さん

作る側も楽しく!
ストーリーを伝えることの大切さ

「オリオン南の奮闘記」の立ち上げに期待

「ビールを作るだけではなく、その先を見てビール作りをしているということが感じられる」とミキトニーさん。
ここまでの話を聞いて改めて感じたようです。

「やはり楽しまなくちゃいけない」と石井さん。
「作る側も面白く可笑しく作って、そこには色々なストーリーがあるので、きちんと伝えていく」とお話します。
これにはミキトニーさんも「大事!」と共感し、改めて『オリオン南の奮闘記』の必要性を感じようです。これには石井さんも「やりましょう!」と声を上げます。

「ストーリーが分かることによって、手に取る側も見る目が変わる」とミキトニーさん。
「面白いと思うんだよね」と神山さんも続きます。

「結果、南さんが色々担う」とミキトニーさん。
「県外の人だから沖縄の人が気がつかない事がたくさんある」と神山さん。
オリオン南の奮闘記に手応えを感じたMCのお二人でした。

以上のディスカッションから、沖縄ビール業界の未来図は次のようになりました!

ビール業界に関する未来図

  • エンタメを絡めたイベントの復活と進化
  • 県産ホップや県産素材を取り入れた商品開発
  • シーンやフードとのペアリング
  • オリオン南の奮闘記(商品開発のストーリー)を載せていく

「沖縄という土地を愛して、その業界を盛り上げたい、沖縄を盛り上げたいという思いが詰まっているなと感じた」と話すミキトニーさん。
沖縄のビール業界を牽引するオリオンビール株式会社のお二人から明るい未来を感じたようです。

Guest Profile

オリオンビール株式会社<br>執行役員 R&D部長 栄養学博士 石井 芳典 いしい よしのり

オリオンビール株式会社
執行役員 R&D部長 栄養学博士
石井 芳典 いしい よしのり

コカ・コーラにて国内外に向けて商品開発を行っていたが、2019年にオリオンビール株式会社に入社。チューハイやハイボールを手掛け業界を盛り上げるため日々邁進している。

オリオンビール株式会社<br>R&D部付(消費者調査担当) 南 佑加子 みなみ ゆかこ

オリオンビール株式会社
R&D部付(消費者調査担当)
南 佑加子 みなみ ゆかこ

大学時代のサークル活動で来沖した際に飲んだオリオンビールの味が忘れられずオリオンビール株式会社に就職。消費者にアンケートなどを行い市場調査を行っている。

→ Webサイト