空き店舗が減少しないのはなぜ?現状と課題とは。
データから見る沖縄市の空き店舗数について
「平成26年~令和3年にかけて、空き店舗が200店舗から180店舗と減少傾向にある。しかし平成26年に比べると減ってはいるが、令和3年では、まだ180店舗あり、平成30年には156店舗まで減ったにも関わらず、令和1年から少しずつ増えている状況」とデータを説明するミキトニーさん。
「商店街に(自分の)店舗があるが、肌感覚では増えてる気がする」と宮島さん。156店舗まで下がった平成30年には、行政と嶺井さんや神山さんが関わったリノベーションスクールがあったからではと推察しました。
スクールの内容が気になる様子のミキトニーさんにお二人が答えました。
本気で考える三日三晩、目指すは事業化
「提案ありきで、物件をどういう風に活用していくか…を初対面のメンバーで何日も議論を重ねた」と嶺井さん。1チーム10名弱のメンバーが、1回のスクールで3チームほど集まったそう。
「空いてる店舗の家主さんに相談して、できる事の可能性を探るという事をやっていた。この期間中にハマってるのでおそらくその影響も多少はあるのかなぁと思う。」と宮島さん。
しかし、実際に店舗がオープンしたケースは多くないそうです。ただ、このスクールで関わった人たちが、街の人達と繋がるきっかけとして面白い取り組みだったと語ります。
俺たちは何屋か?舞い込む物件相談
「今、商売(を沖縄市の商店街で)やろう!といったときに競争率高いのでは?」という神山さん。
そこに、「そうなの!」と答えるミキトニーさん。以前に、仲間のいる沖縄市で事業展開をしようとしたけど物件がなかったそうです。「(空き店舗があるって)数字に現れてるさ?なんでよ?っていうのが率直な意見、こういう人多いんでは?」と続けます。
「多いよ、相談が来る」と答える神山さんに、「俺にも(相談)来る!」と答える宮島さん。不動産屋やろうと笑いを誘うお二人でした。
貸す側と借りる側を仲介する支援
「今パークアベニューで面白い取り組みをしている」と神山さん。閉鎖店舗で放置されてる店舗を無償譲渡して貰い、パークアベニューが大家となって設備修繕を行い、新たに店舗として貸し出しているそうです。
これには「事業主として店舗を構えたい時に、窓口が定かじゃないというところが、かなりネックだった。だからこの取組のように、一括してパークアベニューが(通りの物件は)窓口になるなどをすれば改善されると思う!」と嬉しそうなミキトニーさん。
今回の取り組みでは本屋が入ったそうですが、事例ができたので次が続きやすいように、これを発信していくことが大事だとまとめました。
国道拡幅・店舗の老朽化問題
「国道拡幅に伴って立ち退き状態もあるでしょ?」と神山さん。胡屋十字路あたりからコザボウル手前ぐらいまでの拡幅工事が気になっている様子です。
「シアタードーナツも対象地区なので、どうしようかと考えている」と宮島さんが答えます。(沖縄市の商店街に)引っ越したいと思っても、老朽化した物件しか空きが無いそう。今の事業を長く続けようとすると、リノベーションが必要で、その分借りるお金がかかるとの事でした。
実際、現状貸しと言って、大家さんが修繕はしないけど、(借り主が)全部修繕をするなら貸してくれることもあるそうです。
沖縄市が持つイメージの変化
以前はみんなが止める危ない街!?
「嶺井さんは那覇出身ですよね?」とミキトニーさん。那覇の人から見た沖縄市のコミュニティが気になるご様子。
「TESIOのオープンをしようとした時は周りからは『危ない!』って全力で止められました笑」と答える嶺井さん。シャッター街のイメージもあり、新しいお客さんが来るのか・・と思われていたそうです。
「カルチャーも米軍関係者の方々に向けたサービスで盛り上がってる街だから、昼間の営業が難しいと忠告されて…その後振り切ってオープンするんですが、今は随分この空気が変わって来た。コザにお店を出したい方々が物件を訪ねて回るような空気感に、この数年でガラッと変わってる背景みたいなものってどこなんだろう?ってすごく考えたりします。」と、当時を語る嶺井さん。
「そのきっかけは間違いなく嶺井さん!」と口を揃えて言うMCのお二人。お店のコンセプトや佇まい、そしてなによりも商品がおいしい!と盛り上がるのでした。
コザは夜の街だからこそ、クラフトビールなどの小さな製造業の方々が、日中のものづくりに集中できる場所というところも魅力の一つだそうです。
沖縄市にかかわる人々の声
沖縄市観光物産振興協会
局長 金城諭さん
入居希望者の需要とのミスマッチ、慎重にすすめる商店街づくり
沖縄市中心市街地は「せんべろ」を中心に出店が増えています。コロナ前までは徐々に空き店舗埋まってきていました。令和1年以降はコロナの影響がモロに出ています。
1番街などの貸店舗の課題は、2階の住宅出入り口が1階の店舗になっており、借りる人を選んでる傾向にあります。また、入居希望は飲食店が多いのに対し受け入れ側としては飲食(特に夜営業する居酒屋)などは2階部分(家主の居住部分)へのニオイ問題や騒音問題などもありマッチングが難しいのも大きいです。そのため、家主が自身の駐車場にしたりなど商店街としての役割を果たせなくなってきています。
今の出店希望需要まま、空き店舗に受け入れていくと、商店街ではなく飲み屋街になる可能性もあるので注意しながら進めなくてはいけないと思う。
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この話を受けて、「沖縄市だけじゃなくて他の地域にも言えることだけど、飲食(の需要は)増えるが受け入れられないとか、(色々なカルチャーがあって)自由だから、様々なスタイルの飲食店も多いでしょう?やりたい放題じゃないけど、そういった(店舗を取り締まる)条例も必要になってくると思う。」と意見を述べる神山さんでした。
エシカル起業家
金城ゆきのさん
有機的な街づきあいをするコミュニティが増えていく
これからは、有機的に街づきあいしたいコミュニティが集まってくると思います。
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沖縄市出身の金城さんは沖縄市から全国そして世界へ…と幅広く活動されてるそうです。
これを受けて「このなんだか楽しそうな雰囲気に私も参加したい!というところがすごく大きいような気がするんですね。」とミキトニーさん。
夜は夜の雰囲気もあって、一方で、昼間は底側の繋がりの街づきあいのコミュニティが、新たに大きくなっていくと空き店舗も減っていくのかもしれません。
沖縄市は大人の遊び場?こどもの街?
「『大人のための街』ってイメージがある」と嶺井さん。すかさず「昔はそうじゃなかった!」というミキトニーさん。中学生の時にはプリクラ撮りにパークアベニューまで遊びに来ていたそうです。
沖縄市は「こどもの街宣言」を掲げており、商店街には図書館や映画館などの文化施設が、他にも沖縄こどもの国があったり、子ども達が昼間も楽しめるスポットがたくさんあるそうです。
「むしろ、あるものを活かせていないのかな?」と宮島さん。
広島東洋カープも毎年来ていて、琉球ゴールデンキングスもいて、サッカーの試合も行われるなど、とても贅沢な街だと感じているとのことでした。
課題解決には、コミュニケーションと新しいターゲット
これまでのお話で、沖縄市の空き店舗については様々な課題があることがわかってきました。
流れ的には良くなってきているという状況で、さらに加速させるためにはどうすればよいでしょうか。
意図的な意識を持ってコザならではの魅力を伝える
「駐車場問題とか色々と言われている中でも、愛されているお店というのはずっと継続している」と宮島さん。
そういったお店が長く継続するにはコミュニケーションが重要とのこと。
「意図的な意識を持って、『Koza Super Market』のようなイベントを継続してやっていくと空き店舗は減っていくと思う。」と宮島さん。
「意図的に商売して、遊びに行きたいと思わせているのは、コザで働いている人たちは楽しそうという雰囲気がある」とお話します。
「そう!コザの人たち楽しそうだよね!」とミキトニーさんも共感します。
「コロナ禍になったときもみんなで集まって、夜な夜な会議をした」と宮島さん。
誰かが集合をかけたわけではなく、自然な流れでそうなったようです。
「話したいことも山ほどあって、逆に良いリセット時間だった」と宮島さん。
こうした難題・課題に向き合ってきたコミュニケーションは止めてはいけないと感じているようです。
観光客を新しいターゲットに
「今ある課題を自分たちの世代で解決して、沖縄市でお店が出すことのメリットや楽しさを見せていかないと続かない」とお話するミキトニーさんに、「これはターゲットを明確に設定するべきだと思う」と神山さん。
米軍門前町として、主に軍人をターゲットに栄えた沖縄市中心市街地ですが、社会のインフラが変わり、ネット時代になった時、ターゲット不在になったとお話します。
「ターゲットは観光客で良いと思う」と神山さん。
沖縄の観光客は80%がリピーター。このリピーターをターゲットにする考えのようです。
「パークアベニューをニューヨーク化しよう!」と提唱する神山さん。
「マディソン・スクエア・ガーデンではなく、横のダウンタウンのように生活感が見えて、そこに専門店や老舗があったり、訪れただけでも面白い所を意図的に作るべき」とお話します。
「それにプラスして、お店やオーナーの面白さに魅力を感じてもらえるとハードなリピータになる」とミキトニーさん。
「色々な個性があり、多国籍の人たちが住民登録している街というのは、ある意味ニューヨークみたいな意味では近いところがある」と宮島さんもお話します。
コザの魅力を活かしていくために
良い周波数をもった人たちを集めるブランディングを
「空き物件を埋めよう、解消しようと色んなサービスが入ってくる雑多な街の成り立ちになると、それが本当に『コザの魅力に繋がるのか?』と、とても考えいる」と嶺井さん。
「『コザ』と呼ばれるエリアの中で、世界に通用するものづくりをやっている方々が多い、『良いものづくりをしよう』『良い営みをしよう』という空気感が今コザのなかで満ちている」とお話します。
そうした良い周波数をもった人たちが集まる空気感作りというのを意識しているそうです。
「こんな感度をもった人たちが集まりたいと思えるブランディングをしっかりしないといけない」とミキトニーさん。
コザの魅力を活かすため、ブランディングの重要性を感じたようです。
経済を循環させる上での課題
「その地域の中でも経済が回っているという事をやらないと、横の繋がりは作れないと思う」と宮島さん。
近くの食堂に行ったりと意図的に地域の経済を回すことも必要と考えているようです。
「お金をもっと(地元のために)みんな使おう!」と呼びかける宮島さん。
地元の人たちが、お互いを応援し合い、紹介し合うという関係性作りが街を盛り上げる課題の1つとして感じているようです。
「これはどうしたらできるかな?」とミキトニーさん。
これに嶺井さんがお話します。
「デパートリウボウさんのヘビーユーザーの割合は、那覇市に次いで、沖縄市は2番目。実は経済的にもしっかりした方が暮らしていて、その方々がお金を落とせる場所が地元ではなく、遠く離れた所になっているとしたら、そういう場所がもっと(沖縄市に)増えていくためにはどういうことをしたらいいんだろう?」と嶺井さん。
嗜好性の高いものはとても増えていて、専門店もあり、どこでも買えないようなものがちゃんとあるが、まだまだ届いていないと感じているそうです。
「市街地の中にも欲しいものがちゃんと手に入る場所なんだと認識させることってどうやって訴えられるかは日々考えています」と嶺井さん。
この課題について、サンエー浦添西海岸パルコシティで開催されたイベント「島の装い。展」を継続したり、飲食店のポップアップストアを作ったりといったアイデアを議論していきます。
度量がある窓口をつくる
「沖縄市の空き店舗問題については、わりと前向きに未来に向かって進んでいる状況ではある」とミキトニーさん。
「これは全国の中心市街地にも当てはまることだから、(ここで話したことが)各市町村の中心市街地にもヒントになったり、逆にヒントをもらいにいったりするべきなのかもしれない」と神山さん。
「やはり民間の不動産屋さんと組んで、受け入れるための窓口が必要。借りたものを独占するのではなく、それを解放するような度量がある窓口をつくる」とアイデアをお話します。
「コザは色々と揃っていると思う。スタートアップカフェも存在するし、あれもひとつの窓口でしょう?」と宮島さん。
「そこにちゃんと街のアドバイザーが紐づいていたらいいよね」と神山さんが続きます。
以上のディスカッションから、沖縄市の空き店舗の未来図ポイントは次のようになりました!
沖縄市の空き店舗の未来図
- 空き店舗の窓口を一本化
- ニューヨークのダウンタウンみたいにする
「できそうなポテンシャルはある」とお話するミキトニーさん。
1回でまとめるのは難しかったようですが、沖縄市の強いコミュニティを活かし、みんなで考えていきながら盛り上がっていけたらいいなと思ったようです。
Guest Profile
沖縄市コザ出身。映画館のオーナー他、テレビ番組「コザの裏側」MCや沖縄市の観光大使など幅広く活躍している。
那覇市出身。沖縄市コザで本格ドイツ製法による食肉加工専門店「TESIO」を営む。また、イベントの企画や運営、新店舗の誘致などコザの街づくりに積極的にも関わっている。