ラジオ文化が色濃い沖縄。ラジオ業界の現状と課題とは?

AM/FM局の「エリア別週平均の聴取習慣率」が全国でもダントツの沖縄。県域放送局にレギュラーを多数持つパーソナリティのナガハマヒロキさん、コミュニティラジオ局「FMぎのわん」代表の山内一郎さんと一緒にディスカッションをおこない、沖縄の未来図を作っていきます!

※県域放送局:いわゆる地元のラジオ放送局で沖縄の場合は「琉球放送(RBC)」「ラジオ沖縄(ROK)」「FM沖縄」

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Contents

沖縄とラジオの深い繋がり

まるで酒造メーカー並!?コミュニティラジオ局の数は19局!

「全国でも稀です!」と山内さん。他府県では大きな地域でもこんなに数はないそうです。

「ウチナーンチュ(沖縄の人)はラジオを聴く文化が染み付いているってことなんでしょうか、車社会だったりなど歴史的な背景とかも影響しているんですか?」と沖縄でのラジオ人気を考察し疑問を持つミキトニーさん。

グラフを見ると、岩手・北海道・山梨と車社会の印象が強い県が上位に入ってきていました。「それにしても沖縄は頭一つぬけている」とナガハマさん。沖縄ではアメリカ文化の影響からか、働きながらラジオを聴く習慣があるのだそうです。

エリア別週平均の聴取習慣率
(株式会社ビデオリサーチ/2017年)
エリア別週平均の聴取習慣率
(株式会社ビデオリサーチ/2017年)

コミュニティ局は防災にも役立っている!

「コミュニティ放送と沖縄全域(県域)放送があるけどなにが違うの?」と疑問を持つMCのお二人。

「電波の出力が違うんです」と山内さん。県域放送局は1kwに対し、コミュニティ局は20W(特例でも100W)と決まっているそうです。

「コミュニティ局が最初に出初めたのは阪神淡路大震災ごろ」と山内さん。ローカルの被災情報を放送する局が全国的に増えていったそうです。

「(放送する際に)災害の時には、絶対これを流しなさいみたいなルール的なものはあるの?」と聞く神山さんに「そういったものは特にない」と山内さんが答えます。放送する内容は自由とのことでした。

ラジオの収入源について

ラジオの制作のお財布はどこから?

ラジオの収入について気になっている神山さんに、「結構(局によって)まちまちで、(基本的には)CMの広告収入と番組の枠を売っている」と山内さん。喋り手が枠を買ったり、喋り手が自らスポンサーを付けて収益を上げる仕組みなんだそうです。

コミュニティ局について語る山内さん
コミュニティ局について語る山内さん

スタジオで笑っていたら賞が取れた(笑)

何度も企画を持ち込み、何度も却下され…今では県域の全局に!

『民間放送連盟賞』という賞を貰ったナガハマさん。今では県域放送の全局にレギュラーを持っているそうです。

「スゴイ!」と称賛するMCの二人に「たまたまです…」とあくまでも謙虚なナガハマさん。

企画の内容からご自身で手がけ、「勝手に離島フェア」という企画をつくったそう。伊江島など離島の5箇所に電話を繋ぎ、島の住人の飾らない言葉で島の事をPRするといった内容。出演者が全員めちゃくちゃ面白く、スタジオは笑いの渦に包まれていたとのことでした。

「どんな経緯で企画が生まれたのか?」と質問するミキトニーさんに、「たまたま仕事で行った離島に、純粋培養された面白い人がいて、そこで仲良くなった繋がりで、気軽にやってみた!全国目線では沖縄ローカルの面白さ。沖縄県目線ではコミュニティとかミクロの面白さに繋がったんだと思う」とナガハマさんが答えました。

コミュニティラジオ局の番組表タイトルだけで、「で~じ面白いよね!」と盛り上がるスタジオでした。

※でーじ:沖縄方言で「とても」という意味

賞をとった番組について語るナガハマさん
賞をとった番組について語るナガハマさん

ITで広がるラジオの可能性

radikoを作ってくれた人にサンキューを!

「自分が中学生の時と比べてメディアが細分化してきた昨今、ラジオの立ち位置は変わったのか、どう感じていますか?」と神山さん。

「radiko(ラジコ)の登場があったりして」とナガハマさんが答えます。radikoは場所や時間を選ばず全国の放送が聴けるアプリで、リスナーの輪が広がっていってると感じているそう。「音声コンテンツにはとても魅力があるので、絶対この燈火は消えないですよね!」と盛り上がるスタジオ。

沖縄は注目されやすいだけでなく、レンタカーなどで番組を知ったリスナーが、他の放送に興味を持つきっかけになったりと、他府県とは異なるアプローチもあるのではと感じたミキトニーさんでした。

全国のコミュニティラジオはアプリで!

「僕は新しい可能性も感じる」とナガハマさん。オンラインイベントや直接課金の仕組みがあり、マネタイズできる方法が増えているそうです。一方で、コミュニティラジオはどう感じているのでしょうか?

「radikoにコミュニティラジオは入れない」と山内さん。その代わり「ListenRadio(リスラジ)」と「myTuner Radio(マイチューナーラジオ)」というアプリで何百という全国の放送が聴けるのだそう。

radikoについて盛り上がるスタジオ
radikoについて盛り上がるスタジオ

アンケートから見る現状と課題

ラジオを聴く頻度や場所は?

「今回、番組独自でアンケートを取りました!」とミキトニーさん。
「ラジオを聴く頻度」は49%ほど、40代~50代の方が多いそうです。また、「ラジオを聴く場所」については圧倒的に車が多く、次いで自宅なんだそう。

「家で聴いてるんだ!」と、驚きの様子のミキトニーさんに「家で聴きますよ!」と答えるナガハマさん。
作業中にパソコンから流しているとのことでした。

一方、20代では半数以上が車のオーディオで聴いているのだそう。FM局・AM局が多いものの、どちらも聴くほどラジオ好きな人もいるそうです。

ラジオを聴く頻度やツールなどのアンケート結果
ラジオを聴く頻度やツールなどのアンケート結果

AFN(米軍基地内の放送局)の例を出し、コミュニティ局でも活路があると盛り上がるスタジオ。それを踏まえ、コミュニティラジオが抱える課題は何かあるのでしょうか?山内さんにお聞きしました。

コンテンツの伸び悩みの解決には、特色を出していく事が大事!

「課題というよりは特色を出していければ数字はあまり気にしなくてもいい」と山内さん。FMぎのわんではツイキャスやYoutubeなど独自のコミュニティが出来上がっており、全国にリスナーがいるのだそう。

「ビジネス的には会社は回っているんですか?」と質問するミキトにーさん。
「どうにか回っている」と山内さんが答えます。ギリギリ黒字と言いますが、そこにすかさず神山さんが「今の言い方、でーじ回ってるはずよ!」と笑いを誘いました。

「コミュニティラジオはそこまで儲からない業態、赤字抱えているところもある。」と山内さん。親会社が補填していたり、会社の広告ツールだったりとラジオ一本でやっていないこともあるそう。だからこそ赤字を出してもいいといった考え方もあり、コンテンツが伸びにくいといった現状があるそうです。

すかさずツッコミを入れる神山さん
すかさずツッコミを入れる神山さん

「タグデータ」がカギ?未来のラジオの可能性

「やっぱり儲けていかないと」とナガハマさん。すでに番組に広告枠を出して収入を得たり、今ある番組をストリーミングサービスに乗せて配信したりと、ファンやリスナーを増やす動きがあるそうです。一方で今後はradikoをプラットフォームとして成熟させる動きが全国的にくるとのこと。

radikoのタグデータを使い、曲や紹介した情報を配信中にradikoのプラットフォームに出し、リスナーたちがその場でチケットが買えたりなど、楽しく利用できるようなサービスだそう。これを聞き「めっちゃ便利!」と驚くミキトニーさんでした。

ラジオ業界を盛り上げるためにできること

連合「ギルド」を作ろう!

「コミュティ(局同士)でまとまらない、そこはやっぱり課題かな。」と山内さん。業界の底上げがされず、強くなれないことを課題だと感じているそうです。

「それなら、コミュニティがタッグを組んで一つになれば強いものになれるのでは?」と質問するミキトニーさん。しかし、ラジオ局同士にも相性があるそうで、合わないところと組みたいかと言えば、そうでもないとの事でした。

そこに「連合を作る!「ギルド」!UNION!(合同組合)!」と急に発言する神山さん。それを軽くあしらいながら「個々がそれぞれで成立してるってことは、それだけ個性が強いってこと。それをまとめるって相当大変だと思うんです」と答えるミキトニーさん。山内さん自身も以前に「一緒にCMをやらないか」と他局に提案しても、断られた経験があるのだそう。様々な壁があって中々実現が難しいそうです。

「だからまずは気が合うところから連合(ギルド)を作ろ!」とめげない神山さんでした。

「コスモス賞」!?賞レースで盛り上げる

「賞レース的な要素をコミュニティだけでも作ろう!」と神山さん。例えばギャラクシー賞のようなものだそうです。

「コミュニティ賞とかギャラクシー…コスモス賞とか…」と名称について提案する神山さんに、すかさずミキトニーさんが「コスモス花だから(笑)」とキレの良いツッコミを入れます。どうやら「コスモ(小宇宙)賞」と言いたかったようです。

局をまたいでリスナーが思う「コスモ賞」を募集し、投票していくといった内容。これには楽しそう!と盛り上がるスタジオでした。

切れの良いツッコミを入れるミキトニーさん
切れの良いツッコミを入れるミキトニーさん

地域の特性を生かしたアイデア

「地域の特色を生かして、喋ってる人の強みを活かしながら、イベントができるのが、コミュニティFMの団結の一つだと思う」とナガハマさん。「県内放送局には様々な属性の人がいると思うので、リアルの場づくりをすることで、ここからラジオに興味を持つ人もいるのでは」とお話します。地域のFM局で話している人の情報は信用されやすく地域物産とも相性は良さそうとのことですが、具体的には何ができるのでしょうか?

ナガハマ編集長、沖縄県内全ラジオ局の本を作る!?

「ちゃんとしたムック本を作りたい!」と言うナガハマさん。県内コミュニティ局だけの本は、パーソナリティの方々が作ったものがすでにあるとのこと。しかし、県域放送局も含め、取材~撮影・ライティングまで全ておこなって沖縄県内全ラジオ局の本を作りたいとのことでした。

また、タイムテーブルをもっと浸透させたいという思いもあるそうで、全局の情報を楽しく得られる読み物に差し込んで販売するなど、リスナーとの接点を、(県内のラジオ局)ワンチームとなって増やしていきたいそうです。

これを受けて「みんなでタッグを組むことで、より強いもの(コンテンツ)を生み出せるはず。でも、どうやって実現するのか?」と疑問を持つミキトニーさん。

リアルイベントを開催して各局やリスナーが繋がるきっかけに!

「イベントをやるのがいいかもしれない」と言うお二人に「小さくてもいいからイベントをやって、みんなで共感できるとか、色々テーブルに出せるきっかけあったらいいですね。」と答える神山さん。「それをきっかけに、ラジオ好きになってもらう入り口にもしたいな」とミキトニーさんが続きます。ラジオ好きの人を増やすために、産業まつりのような各局のブースがあって、つまみ食いなどができるイベントにしたいそうです。

各局の個性が光るラジオドラマを!

「(リアルイベントを行う)一方で音声コンテンツを生かしたラジオドラマもやりたい!」と神山さん。一人の脚本家が書いた台本を、各局で読み手を変えてリレーしていくとのこと。地域の特性にあわせた固有名詞を使うなど色付けとかは各局に任せるそうです。これを聞き「興味は湧くかも!めっちゃ面白そう!」と盛り上がるミキトニーさんでした。

アイデアについて語る有識者のお二人
アイデアについて語る有識者のお二人

ラジオ✕芸人で各局のあるあるネタを

「あとひとつ!!芸人のネタでコミュニティ放送と県域の放送に出すリスナーのネタがあったわけ、沖縄お笑いの人のネタで!」と神山さん。

あるお笑い芸人を例に出し、ラジオをネタにしたものを、各局の芸人達に扱ってもらい、各局の個性的な「あるある」を出してもらったら楽しいはずとお話します。

「あるある!ってあるもんね!それこそ芸人さんだけでなく、アーティストの曲でもいいよね!」とミキトニーさん。産業祭のステージイベントで、ネタや歌だけでなく、食もブースを作って食べられるようにしたらいいのでは!と盛り上がりました。

強い個性が魅力になるラジオの力!

あつまれ!ヤバい人!

「街中に面白い人がいっぱいいるよね」というミキトニーさん。コザには「かまどオバー」という推定89歳のラジオ番組をやっている方がいるそうです。精力的に活動をされていて、ドキュメント映画にもなっていたそう。

「コミュニティラジオはとんがっててもいいと思う!うちにもヤバい人はいるから。」と言う山内さんに「審査ガバガバじゃないですか(笑)」と、すかさずツッコむナガハマさん。さすがの対応力に爆笑するスタジオでした。

山内さんいわく、面白いスターは大手でも引っ張れるけど、メディアでは出ないような、ヤバめな人を引っ張れるのはコミュニティラジオ局の強みだと感じているそうです。

それぞれが出会ったことのあるヤバい人談義で盛り上がるスタジオ。「そんな人達を企画にして…シゲさん(神山さん)是非!」と言う山内さんに、即答で「俺嫌だ!」と答える神山さんでした。

「そんな尖った人たちを「面白い」と、受け入れられるのも距離感が近いコミュニティラジオの強みですね!」とミキトニーさん。良くも悪くも何がバズるかは誰にも分からないけど、爆発力の大きなものを生み出せる可能性がコミュニティ局にはあるのでは…と、まとめました。

ヤバい人について盛り上がるスタジオ
ヤバい人について盛り上がるスタジオ

以上のディスカッションから、ラジオ業界のミライズは次のようになりました!

ラジオ業界の未来図

  • 他局とのコミュニティを作る
  • 連携できるコンテンツを作る
  • ラジオの賞レースを作る

「素晴らしい!「コスモ賞」良いですね!」と乗り気の様子のナガハマさん。こんな未来を目指したら沖縄のラジオ業界がさらに盛り上がるのでは!と思うミキトニーさんでした。

Guest Profile

パーソナリティ ナガハマ ヒロキ

パーソナリティ ナガハマ ヒロキ

2005年にラジオパーソナリティとしてデビュー。現在は放送関連のほか、多数のMCやライターなど多方面で活躍中。

「FMぎのわん」代表取締役 山内 一郎 やまうち いちろう

「FMぎのわん」代表取締役 山内 一郎 やまうち いちろう

ラジオパーソナリティーや企画・制作、家事代行サービス「お手伝いマン」など支援活動にも精力的に取り組んでいる。

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